2013.06.11
偽りと永遠の狭間 2話 (永遠の恋人 番外編)
50000hitキリリク作品となります。
偽りの恋人と永遠の恋人の間くらいのお話で、全4話となっております。
鷹男×瑠璃×正良の三つ巴のお話です。
2話は瑠璃語りです。
**********
『 偽りと永遠の狭間 2話 』
偽りの恋人と永遠の恋人の間くらいのお話で、全4話となっております。
鷹男×瑠璃×正良の三つ巴のお話です。
2話は瑠璃語りです。
**********
『 偽りと永遠の狭間 2話 』
鷹男と結婚して早半年。
色々あった末での結婚だったし、とにかく一緒にいれるのが嬉しくて。
夢見る新婚生活!!
・・・・と思っていたのだけど。
鷹男は日本の中枢を担う企業の次期社長。
想像以上に忙しくて、なかなか二人きりの時間が取れずにいた。
鷹男のお父様が引退を決意されて、少しずつ鷹男が社長になるための準備が始まると・・・
本当にプライベートな時間が取れなくなってきた。
一緒に住んでいると言うのに、すれ違いの日々。
一週間のうちの半分近くは、出張やらなにやらで家に帰って来ないし、帰ってくるとしても深夜。
大抵あたしは起きて待っているのだけど、かえってそれが鷹男に気を遣わせているかなぁ?なんて思って。
眠れもしないのに、無理矢理ベッドで目を瞑ったりしていた。
それでもあたしの隣に潜り込むと、ぎゅうっと抱き寄せてくれる鷹男の温もりが大好きで。
時々はわざと目が覚めたふりをして、キスを強請ったりした。
(まぁ、キスだけでは済まなくなっちゃうのが常だったけど・・・・)
そんな鷹男がある日突然頑張ってお休みを取ってくれた。
5日間が限界だったみたいけど、すっごくすっごく嬉しくて、ぎゅうぎゅうと抱きついてしまった。
どこか行きたい場所を考えておけ・・・って言われたけど。
これが案外難しい。
5日間で海外もなしではないけど・・・・移動に時間がかかってのんびり出来ない気がする。
ならば近場で温泉旅行にでもしようか?なんて思ってもみたのだけど。
なかなかいい案が浮かばない。
どうしたものか・・・と思って、正良さんからメールがあった時に相談してみたら。
明日色々パンフレットを持ってきてくれるって言ってくれた。
正良さんとも以前は色々あったけれど・・・・
今ではすっかり仲の良い義理の姉弟。
頻繁にうちに遊びに来てくれるし、おかげであたしは随分助けられていた。
ある意味、正良さんのことをすっごく頼りにしていたし。
鷹男がそのことをあまり良く思ってないなんて・・・実は全くわかっていなかったのだけど。
翌日、正良さんは約束通り旅行パンフを持って、遊びに来てくれた。
「良かったね、瑠璃さん。兄さんが休みを取れて。」
「うん、ありがとう。」
「で、これがパンフ。でもってこれが我が社の一押し。」
そう言って正良さんが沢山あるパンフレットの中から一つを取り出した。
「えっと・・・豪華客船で行く利尻島・礼文島4泊5日の旅・・・・?」
「そっ。で利尻島と礼文島のパンフがこれね。この時期花が綺麗らしいよ。」
「うわーー、ほんとだ!!」
「でも一押しは島じゃなくてこの豪華客船。パシフィック・シンフォニー。
そのパンフがこれ。」
「きゃあ、素敵!!・・・ええーーっ、中もすっごいのね!!
あたしディナークルーズくらいしかしたことないけど・・・・・」
「そんなものとは比べもののならないよ。」
「それに決めたわ!!」
「あははは。それは嬉しいけど、もう少し色々見てから決めなよ。兄さんに相談も必要でしょ?」
「――――うん、そうだね。じゃあ決まったら電話する!!」
「わかった。」
結局その日、すっかりその豪華客船に魅入られてしまったあたしは。
正良さんに根掘り葉掘りその内容を聞いて・・・
鷹男にそこに行きたい!って宣言をした。
正良さんのとこの旅行ツアーだって聞くと、ちょっと嫌な顔をしたけれど、結局OKしてくれた。
全く、鷹男ったら未だ正良さんのことになると焼きもち妬くんだから。
でもそれもちょっぴり嬉しかったりもするんだけど。
OKしてくれたのはいいんだけど・・・・エグゼクティブスイートじゃないとダメだって言うから・・・
仕方なくそれで予約をお願いした。
正良さんはわかっていたみたいで、くすくす笑っていたっけ。
そんな高価なお部屋じゃなくても、あたしは鷹男と二人でいられれば何処でもいいのに。
でも・・・たまにはそんな贅沢も・・・・いいかもしれないと、自分に言い聞かせた。
**********
ようやくやってきた旅行の日。
あたしは数日前から楽しみで楽しみで仕方なかった。
パシフィック・シンフォニー号は想像以上に素晴らしくて。
入った途端、隅々まで走って歩きたい衝動を必死で堪えた。
鷹男が取りあえず部屋に行こうって言うから、部屋に入ってこれまたびっくり!!
お部屋も相当凄い!!
一流ホテルのスイートも顔負けって感じ。
鷹男に促されて、ランチビュッフェに出かけると、勿論これも素晴らしかった。
ラッキーなことに、海が見える絶好な座席に案内された。
うん、うん。ついてるかも~!!
「鷹男、早く取ってこよう!!」
「瑠璃好きな物取って来いよ。どうせこの上に並びきれないくらい持ってくるんだろ?」
「えへへ。わかった?じゃあちょっと行ってくる!!」
鷹男の好きなモノとあたしの好きなモノと、一杯持って来よう!!
と意気込んで席を離れたその時、微かに鷹男の携帯音が聞こえて振り返った。
渋そうな顔をしている鷹男。
―――――もしかして、お仕事とか言わないよね?
不安げに見つめていると、大丈夫だとばかりに微笑むから・・・・
ここに立ち尽くしていても仕方ないから・・・
きっと大丈夫!!と自分に言い聞かせて、歩き出した。
一通り、お皿一杯に食べ物を取り、席に戻ると・・・・
「あれぇ?正良さん?」
さっきまで鷹男が座っていた場所に、正良さんが座っていた。
「瑠璃さん、パシフィック・シンフォニーにようこそ。どう?印象は。」
「まだほとんど見ていないんだけど、もう興奮しまくり!!お部屋もすっごく素敵だった。」
「ふふふ。なら良かった。」
「正良さんは・・・・お仕事?」
「そっ。今回は大切なお客様を乗せているからね。一応責任者の僕も同乗したってわけ。」
「へぇ~。そんな凄い方が乗っているの?」
「くくくくく・・・・・ま、まぁ、そうだね。」
何故か正良さん笑ってるけど・・・・なんで?
「あぁ、それより瑠璃さん、どうやら兄さん、仕事になってしまったらしいよ。」
「えっ!?うそ!!??」
「残念ながら本当。さっき秘書の秋篠さんから僕の所に直接連絡があったんだ。
ヘリの着陸要請だったんだけど、もうすぐ着くらしいよ。」
「ヘリって・・・・そんなすぐに!?」
「多分、兄さんもよっぽどでない限り連絡するなって言っていただろうから、よっぽどの事態なんじゃぁないかな。」
・・・・・・かなり凹む。
だって、今日っていう日をどれだけ楽しみにしていたことか!!
でもお仕事だって言われたら・・・・どうしようもないじゃない?
こんなことならやっぱり家でゆっくりしてた方が良かった・・・・
「瑠璃さん?大丈夫?」
「えっ!?へ、平気よ。慣れてるもん。」
「またそんな強がらなくたって。・・・・ねぇ、瑠璃さん、もし良かったら兄さんが戻ってくるまで僕と過ごさない?」
「え?だって正良さん、お仕事でしょう?」
「僕は責任者だから要所要所で顔を出せばいいんだ。あまりしゃしゃり出るとここの従業員がやりにくいだろうし。
瑠璃さんが兄さんと楽しく過ごしているなら顔出すつもりはなかったんだけどさ。
状況が状況だからこうして顔を出したんだ。どうする?
勿論帰るって言うのなら、秋篠さんが別のヘリを用意してくれると思うよ?」
「・・・・帰りたくない・・・な。」
だって帰ったら、余計寂しくなる。
「じゃあ決まり。僕がエスコートするから任せて。何しろこの船のことは一番わかっているからね。」
「そうだね。正良さんとなら・・・楽しく過ごせそう。
じゃあお言葉に甘えちゃおうかな?」
「よし。そうと決まったらまずは腹ごしらえだ。瑠璃さん、あっちにめっちゃおいしいデザートあるんだけど持ってきた?」
「え?うそ!?でもデザートはご飯終わってからでいいかなぁ~って。」
「甘いなぁ。数量限定なんだよ、それ。多分確実になくなるよ?」
「本当に!?今すぐ取ってくる!!」
慌ててそう言うと、正良さんはくすくすと笑った。その時、あたしの真後ろから鷹男の声がした。
「正良。何で此処にいる?」
「鷹男!!いつの間に戻ってきたのよ。びっくりするじゃない。」
振り返ると、とっても不機嫌そうな鷹男。
そりゃあそうだよね。せっかく旅行に来てるのに、お仕事の電話が入ったんじゃあ。
「やあ、兄さん。僕も今回責任者としてこの船に乗っていたんでね。ご挨拶に。」
「何がご挨拶にだ。まぁ、いい。それよりも瑠璃、実は・・・・・」
「あ、お仕事のことなら正良さんから聞いたよ。すぐに秋篠さんが迎えに来るんだって?」
鷹男がチラリと正良さんに視線を向ける。
「・・・・本当にごめん、瑠璃!!
で、どうする?一人で此処に残っても退屈だろうからもう一台ヘリを・・・・」
「あ、大丈夫よ!!正良さんがねぇ、一緒に過ごしてくれるって。」
「正良が?」
「どうせ僕退屈だから。せっかく旅行に来たのに、瑠璃さんまで兄さんに巻き込まれることないだろう?」
「だが・・・・・」
鷹男はあたしを此処に残したくないみたい。あたしなら全然一人でも平気なのに。
「鷹男、せっかくだからあたし此処に残りたい。・・・いいでしょ?」
鷹男が何故か深い溜息をついた。
「わかったよ。なるべく早く戻ってくる。明後日には戻るから!
だから正良、それまで瑠璃をよろしく頼む。」
「そんな慌てなくても大丈夫だよ。なんなら家までちゃんと送り届けるからさ。」
「戻ると言っているだろう!!」
鷹男が怒ったようにそう言うと、正良さんは面白そうに笑って肩をすくめた。
全くもう!!あまり鷹男のこと怒らせないでよ!!
「じゃあ鷹男、待ってるね。でもあまり無理しないで?」
「ああ。わかった。電話もするよ。」
「うん。」
「ほら、兄さんヘリ来たみたいだよ?早く行った方がいいんじゃない?」
鷹男は軽く正良さんを睨むと、あたしに微笑んでその場を立ち去って行った。
「瑠璃さん、ほら、デザート、デザート!!」
「あ、そうだった。」
慌ててデザートの方に向かいながら、ついつい鷹男の方を振り返った。
でももうそこに鷹男の姿はなかった。
置いて行かれたような・・・とても寂しい気分になった。
その後正良さんはあたしのことをめいっぱい楽しませてくれた。
プールに入ったり、映画を見たり。エステまでしてもらった。
驚くほど豪華で美味しいディナーを食べながら。
鷹男と一緒だったらもっと楽しいだろうなぁ~なんて思ってしまって。
正良さんに申し訳なくてその日は早々に部屋に戻ることにした。
正良さんが、素敵なbarがあるって誘ってくれたけど・・・
でも今夜はそんな気分にはなれなかった。
その夜、鷹男から電話はなかった。
翌日は利尻島をめいっぱい楽しんだ。
また正良さんに少しカクテルでも飲もうって誘われたけど。
鷹男から連絡があるかもしれないから・・・と思って断って一人部屋に籠った。
鷹男から連絡はなかった。
三日目は礼文島をこれまためいっぱい楽しんだ。
楽しい。すっごく楽しい。
だけど、あたしは鷹男のことがどうしても気になってしまう。
連絡くらいくれればいいのに・・・・
今夜はデッキでカクテルパーティーが行われる。
正良さんが気分転換になるから行こうって言う。
そう言われて初めて気が付いた。
気分転換に・・・って言われるってことは、正良さんから見たらあたし随分沈んでいたのだろう。
せっかく一緒に過ごしてくれているのに申し訳ない。
きっと今夜も鷹男から連絡はないだろう。それだけ仕事が忙しいに違いない。
三日で戻るって言ったのに・・・・
だから今夜はカクテルパーティーに参加することにした。
今夜の為に鷹男が用意してくれた、あたしにしては露出度たっぷりのマーメイドドレスを着て。
でも出て良かったと思う。
カクテルもおつまみもすっごく美味しいし、とにかく楽しい。
あれ?もしかして酔っぱらってるのかな?と思いながらも・・・・
飲み口の良いお酒をどんどん飲んでいた。
正良さんがそろそろ止めた方がいいよ?って言ったような気もするけど・・・
体がふわふわして・・・・気分が良くて、言うことも聞かずにじゃんじゃん飲んでしまった。
そして・・・・・・
「気持ち悪い・・・・・・」
ふらふらとする体を正良さんに支えられ、部屋に戻ることになってしまった。
むかむかするし、足元はぐらぐらするし・・・・
正良さんが部屋のカギを開けるのをのろのろと見ていて・・・・
そこで意識が途絶えた。
続く
ポチッとして頂けると嬉しいです!色々あった末での結婚だったし、とにかく一緒にいれるのが嬉しくて。
夢見る新婚生活!!
・・・・と思っていたのだけど。
鷹男は日本の中枢を担う企業の次期社長。
想像以上に忙しくて、なかなか二人きりの時間が取れずにいた。
鷹男のお父様が引退を決意されて、少しずつ鷹男が社長になるための準備が始まると・・・
本当にプライベートな時間が取れなくなってきた。
一緒に住んでいると言うのに、すれ違いの日々。
一週間のうちの半分近くは、出張やらなにやらで家に帰って来ないし、帰ってくるとしても深夜。
大抵あたしは起きて待っているのだけど、かえってそれが鷹男に気を遣わせているかなぁ?なんて思って。
眠れもしないのに、無理矢理ベッドで目を瞑ったりしていた。
それでもあたしの隣に潜り込むと、ぎゅうっと抱き寄せてくれる鷹男の温もりが大好きで。
時々はわざと目が覚めたふりをして、キスを強請ったりした。
(まぁ、キスだけでは済まなくなっちゃうのが常だったけど・・・・)
そんな鷹男がある日突然頑張ってお休みを取ってくれた。
5日間が限界だったみたいけど、すっごくすっごく嬉しくて、ぎゅうぎゅうと抱きついてしまった。
どこか行きたい場所を考えておけ・・・って言われたけど。
これが案外難しい。
5日間で海外もなしではないけど・・・・移動に時間がかかってのんびり出来ない気がする。
ならば近場で温泉旅行にでもしようか?なんて思ってもみたのだけど。
なかなかいい案が浮かばない。
どうしたものか・・・と思って、正良さんからメールがあった時に相談してみたら。
明日色々パンフレットを持ってきてくれるって言ってくれた。
正良さんとも以前は色々あったけれど・・・・
今ではすっかり仲の良い義理の姉弟。
頻繁にうちに遊びに来てくれるし、おかげであたしは随分助けられていた。
ある意味、正良さんのことをすっごく頼りにしていたし。
鷹男がそのことをあまり良く思ってないなんて・・・実は全くわかっていなかったのだけど。
翌日、正良さんは約束通り旅行パンフを持って、遊びに来てくれた。
「良かったね、瑠璃さん。兄さんが休みを取れて。」
「うん、ありがとう。」
「で、これがパンフ。でもってこれが我が社の一押し。」
そう言って正良さんが沢山あるパンフレットの中から一つを取り出した。
「えっと・・・豪華客船で行く利尻島・礼文島4泊5日の旅・・・・?」
「そっ。で利尻島と礼文島のパンフがこれね。この時期花が綺麗らしいよ。」
「うわーー、ほんとだ!!」
「でも一押しは島じゃなくてこの豪華客船。パシフィック・シンフォニー。
そのパンフがこれ。」
「きゃあ、素敵!!・・・ええーーっ、中もすっごいのね!!
あたしディナークルーズくらいしかしたことないけど・・・・・」
「そんなものとは比べもののならないよ。」
「それに決めたわ!!」
「あははは。それは嬉しいけど、もう少し色々見てから決めなよ。兄さんに相談も必要でしょ?」
「――――うん、そうだね。じゃあ決まったら電話する!!」
「わかった。」
結局その日、すっかりその豪華客船に魅入られてしまったあたしは。
正良さんに根掘り葉掘りその内容を聞いて・・・
鷹男にそこに行きたい!って宣言をした。
正良さんのとこの旅行ツアーだって聞くと、ちょっと嫌な顔をしたけれど、結局OKしてくれた。
全く、鷹男ったら未だ正良さんのことになると焼きもち妬くんだから。
でもそれもちょっぴり嬉しかったりもするんだけど。
OKしてくれたのはいいんだけど・・・・エグゼクティブスイートじゃないとダメだって言うから・・・
仕方なくそれで予約をお願いした。
正良さんはわかっていたみたいで、くすくす笑っていたっけ。
そんな高価なお部屋じゃなくても、あたしは鷹男と二人でいられれば何処でもいいのに。
でも・・・たまにはそんな贅沢も・・・・いいかもしれないと、自分に言い聞かせた。
**********
ようやくやってきた旅行の日。
あたしは数日前から楽しみで楽しみで仕方なかった。
パシフィック・シンフォニー号は想像以上に素晴らしくて。
入った途端、隅々まで走って歩きたい衝動を必死で堪えた。
鷹男が取りあえず部屋に行こうって言うから、部屋に入ってこれまたびっくり!!
お部屋も相当凄い!!
一流ホテルのスイートも顔負けって感じ。
鷹男に促されて、ランチビュッフェに出かけると、勿論これも素晴らしかった。
ラッキーなことに、海が見える絶好な座席に案内された。
うん、うん。ついてるかも~!!
「鷹男、早く取ってこよう!!」
「瑠璃好きな物取って来いよ。どうせこの上に並びきれないくらい持ってくるんだろ?」
「えへへ。わかった?じゃあちょっと行ってくる!!」
鷹男の好きなモノとあたしの好きなモノと、一杯持って来よう!!
と意気込んで席を離れたその時、微かに鷹男の携帯音が聞こえて振り返った。
渋そうな顔をしている鷹男。
―――――もしかして、お仕事とか言わないよね?
不安げに見つめていると、大丈夫だとばかりに微笑むから・・・・
ここに立ち尽くしていても仕方ないから・・・
きっと大丈夫!!と自分に言い聞かせて、歩き出した。
一通り、お皿一杯に食べ物を取り、席に戻ると・・・・
「あれぇ?正良さん?」
さっきまで鷹男が座っていた場所に、正良さんが座っていた。
「瑠璃さん、パシフィック・シンフォニーにようこそ。どう?印象は。」
「まだほとんど見ていないんだけど、もう興奮しまくり!!お部屋もすっごく素敵だった。」
「ふふふ。なら良かった。」
「正良さんは・・・・お仕事?」
「そっ。今回は大切なお客様を乗せているからね。一応責任者の僕も同乗したってわけ。」
「へぇ~。そんな凄い方が乗っているの?」
「くくくくく・・・・・ま、まぁ、そうだね。」
何故か正良さん笑ってるけど・・・・なんで?
「あぁ、それより瑠璃さん、どうやら兄さん、仕事になってしまったらしいよ。」
「えっ!?うそ!!??」
「残念ながら本当。さっき秘書の秋篠さんから僕の所に直接連絡があったんだ。
ヘリの着陸要請だったんだけど、もうすぐ着くらしいよ。」
「ヘリって・・・・そんなすぐに!?」
「多分、兄さんもよっぽどでない限り連絡するなって言っていただろうから、よっぽどの事態なんじゃぁないかな。」
・・・・・・かなり凹む。
だって、今日っていう日をどれだけ楽しみにしていたことか!!
でもお仕事だって言われたら・・・・どうしようもないじゃない?
こんなことならやっぱり家でゆっくりしてた方が良かった・・・・
「瑠璃さん?大丈夫?」
「えっ!?へ、平気よ。慣れてるもん。」
「またそんな強がらなくたって。・・・・ねぇ、瑠璃さん、もし良かったら兄さんが戻ってくるまで僕と過ごさない?」
「え?だって正良さん、お仕事でしょう?」
「僕は責任者だから要所要所で顔を出せばいいんだ。あまりしゃしゃり出るとここの従業員がやりにくいだろうし。
瑠璃さんが兄さんと楽しく過ごしているなら顔出すつもりはなかったんだけどさ。
状況が状況だからこうして顔を出したんだ。どうする?
勿論帰るって言うのなら、秋篠さんが別のヘリを用意してくれると思うよ?」
「・・・・帰りたくない・・・な。」
だって帰ったら、余計寂しくなる。
「じゃあ決まり。僕がエスコートするから任せて。何しろこの船のことは一番わかっているからね。」
「そうだね。正良さんとなら・・・楽しく過ごせそう。
じゃあお言葉に甘えちゃおうかな?」
「よし。そうと決まったらまずは腹ごしらえだ。瑠璃さん、あっちにめっちゃおいしいデザートあるんだけど持ってきた?」
「え?うそ!?でもデザートはご飯終わってからでいいかなぁ~って。」
「甘いなぁ。数量限定なんだよ、それ。多分確実になくなるよ?」
「本当に!?今すぐ取ってくる!!」
慌ててそう言うと、正良さんはくすくすと笑った。その時、あたしの真後ろから鷹男の声がした。
「正良。何で此処にいる?」
「鷹男!!いつの間に戻ってきたのよ。びっくりするじゃない。」
振り返ると、とっても不機嫌そうな鷹男。
そりゃあそうだよね。せっかく旅行に来てるのに、お仕事の電話が入ったんじゃあ。
「やあ、兄さん。僕も今回責任者としてこの船に乗っていたんでね。ご挨拶に。」
「何がご挨拶にだ。まぁ、いい。それよりも瑠璃、実は・・・・・」
「あ、お仕事のことなら正良さんから聞いたよ。すぐに秋篠さんが迎えに来るんだって?」
鷹男がチラリと正良さんに視線を向ける。
「・・・・本当にごめん、瑠璃!!
で、どうする?一人で此処に残っても退屈だろうからもう一台ヘリを・・・・」
「あ、大丈夫よ!!正良さんがねぇ、一緒に過ごしてくれるって。」
「正良が?」
「どうせ僕退屈だから。せっかく旅行に来たのに、瑠璃さんまで兄さんに巻き込まれることないだろう?」
「だが・・・・・」
鷹男はあたしを此処に残したくないみたい。あたしなら全然一人でも平気なのに。
「鷹男、せっかくだからあたし此処に残りたい。・・・いいでしょ?」
鷹男が何故か深い溜息をついた。
「わかったよ。なるべく早く戻ってくる。明後日には戻るから!
だから正良、それまで瑠璃をよろしく頼む。」
「そんな慌てなくても大丈夫だよ。なんなら家までちゃんと送り届けるからさ。」
「戻ると言っているだろう!!」
鷹男が怒ったようにそう言うと、正良さんは面白そうに笑って肩をすくめた。
全くもう!!あまり鷹男のこと怒らせないでよ!!
「じゃあ鷹男、待ってるね。でもあまり無理しないで?」
「ああ。わかった。電話もするよ。」
「うん。」
「ほら、兄さんヘリ来たみたいだよ?早く行った方がいいんじゃない?」
鷹男は軽く正良さんを睨むと、あたしに微笑んでその場を立ち去って行った。
「瑠璃さん、ほら、デザート、デザート!!」
「あ、そうだった。」
慌ててデザートの方に向かいながら、ついつい鷹男の方を振り返った。
でももうそこに鷹男の姿はなかった。
置いて行かれたような・・・とても寂しい気分になった。
その後正良さんはあたしのことをめいっぱい楽しませてくれた。
プールに入ったり、映画を見たり。エステまでしてもらった。
驚くほど豪華で美味しいディナーを食べながら。
鷹男と一緒だったらもっと楽しいだろうなぁ~なんて思ってしまって。
正良さんに申し訳なくてその日は早々に部屋に戻ることにした。
正良さんが、素敵なbarがあるって誘ってくれたけど・・・
でも今夜はそんな気分にはなれなかった。
その夜、鷹男から電話はなかった。
翌日は利尻島をめいっぱい楽しんだ。
また正良さんに少しカクテルでも飲もうって誘われたけど。
鷹男から連絡があるかもしれないから・・・と思って断って一人部屋に籠った。
鷹男から連絡はなかった。
三日目は礼文島をこれまためいっぱい楽しんだ。
楽しい。すっごく楽しい。
だけど、あたしは鷹男のことがどうしても気になってしまう。
連絡くらいくれればいいのに・・・・
今夜はデッキでカクテルパーティーが行われる。
正良さんが気分転換になるから行こうって言う。
そう言われて初めて気が付いた。
気分転換に・・・って言われるってことは、正良さんから見たらあたし随分沈んでいたのだろう。
せっかく一緒に過ごしてくれているのに申し訳ない。
きっと今夜も鷹男から連絡はないだろう。それだけ仕事が忙しいに違いない。
三日で戻るって言ったのに・・・・
だから今夜はカクテルパーティーに参加することにした。
今夜の為に鷹男が用意してくれた、あたしにしては露出度たっぷりのマーメイドドレスを着て。
でも出て良かったと思う。
カクテルもおつまみもすっごく美味しいし、とにかく楽しい。
あれ?もしかして酔っぱらってるのかな?と思いながらも・・・・
飲み口の良いお酒をどんどん飲んでいた。
正良さんがそろそろ止めた方がいいよ?って言ったような気もするけど・・・
体がふわふわして・・・・気分が良くて、言うことも聞かずにじゃんじゃん飲んでしまった。
そして・・・・・・
「気持ち悪い・・・・・・」
ふらふらとする体を正良さんに支えられ、部屋に戻ることになってしまった。
むかむかするし、足元はぐらぐらするし・・・・
正良さんが部屋のカギを開けるのをのろのろと見ていて・・・・
そこで意識が途絶えた。
続く
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