静かなる叫び・7

現代のお話です。
ちょっとダークなお話となりますのでご注意下さい。

瑠璃ちゃんサイドです。

**********

『 静かなる叫び・7 』

「瑠璃さん、何でも私に相談して下さいね。」

素敵な方だと思っていた。
刑事さんって皆いかつくて、冷たいイメージだった。
でも彼・・・神門さんは違った。
とても穏やかで優しい顔をしていた。

本当にあたしの事を心配してくれていると思っていた。

後で思えばわかったことなのに。
管理官でもある彼が、何の見返りもなくあたしみたいな者に近づくはずがないってことを。

「瑠璃さん、何か勘違いをしていませんか?」

父さんの件を全く調べてくれていないとわかった時、あたしは神門さんに詰め寄った。
どうして!?
どうして何もしてくれないの!?・・・・・と。
そんなあたしに彼は少しばかりの薄笑いを浮かべながらそう言ったのだ。

何か勘違いをしていませんか?・・・・と。

「契約書にサインしたでしょう?
 そのおかげであなたの生活は保障されている。
 他に何が不満なのですか?」

「じゃあもう保障して頂かなくて結構です!」

「・・・・・・今まで受けた援助金・・・・いくらになると思います?
 あなたに・・・・返せるんですか?」

思わず唇を噛んだ。
本当なら父さんの生命保険が入るはずだった。
でも・・・・・自殺だったからその保険金は手に入らなかった。

あたしの手元に残ったものは、わずかばかりの現金ともう古くなった家だけ。
一軒家はあたしに住むには大きすぎるから・・・・と、売りに出したから、少しばかりのお金は手に入った。
それで全額返金しよう!
そう思ったのだけど。

「一時的にお金を返したとして、その後どうするんですか?
 大学も諦めるつもりですか?」

「・・・・・・諦めます。」

神門さんは大きな溜息をついた。

「あなたが今住まわれているマンション、いくらすると思っています?
 あなたの生活費に毎月いくらかかっていると思います?
 それにあなたが今も服薬している薬、かなり高額なのでしょう?
 本気で返せると思っているんですか?本気で今後やっていけると思っているんですか?」

「返します!何年かかっても!!
 今後もなんとかやっていきます!
 高価な薬なんてもう飲まなくても大丈夫ですし!」

そう言ったら。
神門さんは小さくため息を吐いた。

「瑠璃さん・・・・はっきり言わなかったのは申し訳ないけれど、あなたのお父さんが自殺だったことは覆しようのない事実です。
 今後再捜査される対象にもならないでしょう。」

「そんな・・・・・」

「そんなあなたを心配して大野氏は援助を申し出てくれた。
 これって、とてもラッキーなのですよ?
 親の自殺によって苦労している子供たちを何人も見てきました。
 それに薬の事も聞いていますがそれを止めるとあなたの命にかかわる。
 簡単に服薬をやめるなんて言っては駄目だ。」

確かにそうかもしれない。
あたしは恵まれているのかもしれない。
だけど・・・・・

「素直に援助を受けて、大学に行って立派な社会人になりなさい。
 それがお父様も望んでいる事ではないでしょうか?」

そう言って、ポンと肩を叩かれた。
静かになってしまったあたしが納得しているとでも思ったのだろう。

冗談じゃない!
納得なんて一つもしていない。

結局、あたしは・・・・父さんは権力と財力に負けたのだ。
この国はそういったモノを持っている人たちで牛耳られている。

ならば・・・・・
あたしもそっち側にいかなければ勝負出来ない?

いいじゃない。
援助、受けてやろうじゃない。

そしていつか・・・・・

「わかりました。」

そう答えると、神門さんは少し安心したように笑った。
大好きだったその笑顔も、今はもう白々しくしか感じない。

「相談にはいつでものりますから。何でも言ってきてください。」

「はい。」

はいと答えたけれど、多分あたしはもう神門さんには会わないだろう。

援助を受けて、一流大学に行って、そっち側に行ってみせる。

そしていつか―――――

恩返ししてみせる。
復讐という名の恩返しを。







あれ?
ふと目が覚めた。
どうやら夢を見ていたようだ。
嫌な気分。
あの時の事を思い出したくなんてないのに。
心に深く刻まれているせいか、度々夢に見てしまう。

「あ、起きた?」

するはずのない声が聞こえてびっくりしてそっちを見ると、にこやかに微笑んでいる刑事さん。
一条鷹男・・・・憎き神門の息子。

冷静になって辺りを見回すと全く知らない部屋。
その隅にある大きめのソファーに寝かされていた。

一瞬にして状況を把握した。

最近のあたしは、少しばかりの興奮で気絶をしてしまう。
病院で相談したらもう少しきちんと薬を飲みなさいと言われた。
完治したはずなのに何故薬を飲み続けなければいけないのか・・・・
そんな反発心もあって、薬を飲む量を減らしているせいかもしれない。

神門さんの話をされて、一気に興奮し倒れたあたしを。
どうやらこの人は自宅に運んだらしい。

なんて迷惑な・・・・・

「一瞬にして状況を把握して、なんて面倒くさい事をしてくれたんだ!
 ・・・・・・って思ってるだろ?」

ふーん。
エリート刑事ともなれば顔色を見ただけである程度のことはわかるようね。

「そうですね。その通りです。」

だからはっきりとそう言ってやった。

「助けて頂いたのはありがたいのですが、救急車でも呼んでいただければ良かったのに。」

「あははは。それは悪かったね。」

「刑事さんともあろう者が、女子大生を家に連れ込んだ・・・・って噂流されたらまずいんじゃないですか?」

「君はそんな事しないでしょ。」

決めつけられるようにそう言われて、ちょっとムカついた。

「買いかぶりすぎですよ、刑事さん。
 なんなら今すぐこの部屋の写真を添えてインスタにアップしましょうか?」

「甘いね。どうやってそんなことするつもり?
 君の持ち物は此処にあるのに?」

ほら?というように刑事さんがあたしのベージュのバッグを持ち上げた。

「今そんな事したって無駄ですよ。
 家に帰ってからいくらでもアップできますから。
 警視総監の息子が女子大生を家に連れ込んで乱暴・・・・なんてイイ記事になりますよ。」

「出来ると思うならやってみるといい。」

そんな事言われなくてもわかってる。
この人はエリート警部補。そして警視総監の息子。
あたしの言うことなんてどうにでも捻じ曲げられる世界に住んでいる人なのだ。

「いいですね。親に・・・・・権力に守られて。」

これは本音。
あたしにだって権力があれば。
父さんの事だって黙ってはいないのに。

取り敢えず帰る準備をしようと、ソファーから起き上がった。
まだ少し頭が痛む。

「まだ顔色が悪い。もう少し寝ていた方がいい。」

「大丈夫です。」

きっぱりとそう言い放つと、仕方ないとばかりに苦笑いを浮かべる刑事さんが目に入った。

「帰ります。」

そう言ってバッグに手を伸ばすと、すっとそれを後ろに隠された。

「まだ帰さないよ。」

あぁ、苛々する。
体調も悪いし面倒だけど仕方ない。
男ってそういう生き物だからこれで納得してくれるだろう。

そう思ったから、シャツのボタンを外しながら淡々と言った。

「わかりました。借りは返します。それで納得して頂けます?」

大抵の男は何も言わずにあたしを抱く。
それですべてが丸く収まる。
なのにこの男は・・・・・

「お前、馬鹿か?」

そう言うと、あたしの手を掴んでボタンを外すのを止められた。

「早くシャツのボタンをとめろ。
 悪いが女子大生に興味はないんでね。」

「そうですか。私がお好みではなかったのですね。
 ではどうすれば帰らせて頂けるのですか?」

「俺はただ君と話をしたいだけ。
 具合が悪いならもう少し休んでからでもいい。
 少し・・・・・話をしないか?」

「・・・・・・・・・・・須藤先輩の話ならあれ以上何もありませんよ。
 本当にたった一夜を共にしただけなんですから。」

「あぁ、それはわかってるよ。」

「じゃあ何の話ですか?」

「んー、君のこれまでの話。」

「は?」

「俺の父親と何があったのか・・・・・凡そは把握できている。
 だが調べてもわからない事も沢山ある。
 だから教えて欲しい。」

「ふっ・・・・あなたがそれを知ったからと言って何になるんですか?
 罪滅ぼしでもすると?」

「いや。」

そう言うと刑事さんはじっとあたしを見て。
そして言った。

「君、今回の事件が初めてじゃないでしょう?
 被害者と接点があったの。」

「え?」

「一年前。」

ドクンと心臓が音を立てる。

「無差別殺人で亡くなった被害者、橋本聡介。
 彼と付き合ってた時期があっただろう?」

どうしてこの人は!
そんな些細な事を見つけ出してくるの?

震える手を必死に抑えて、なんとか冷静に答えた。

「一年前ですか?
 ・・・・・・覚えてないな。」

刑事さんがじっとあたしを見ている。
ボロを出しては駄目。

「だってあたし、この一年で数えきれない男達と寝てきましたから。
 その中でどの人が付き合った・・・と言える人なのか・・・・
 名前すら憶えていない人がほとんどですから。」

そう言っていつもの――――
妖艶な笑みを浮かべた。

この男には通用しないとわかっているけれど・・・・
大抵の男達があたしの前に屈する悪魔の笑みをありったけの力を込めて・・・・

微笑んだ。




続く



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