2019.04.19
男と女の事情・38
777777hitキリリク第二弾作品、平安のお話です。
リク主:りみ様
リク内容:ジャパネスク版『とりかえばや物語』
引き続き鷹男サイドです
**********
『 男と女の事情・38 』
リク主:りみ様
リク内容:ジャパネスク版『とりかえばや物語』
引き続き鷹男サイドです
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『 男と女の事情・38 』
なんとなく気が重かった。
我武者羅に政務をこなし、ようやく一息ついたのは昼過ぎの事だった。
夜御殿で瑠璃姫は、今も何一つ身に纏わずに震えているのだろうか?
そう考えると、気まずい気持ち以上に、体が高ぶるのもわかった。
所詮私もただ一人の男なのだと思い知らされる。
女一人にこれほど振り回されようとは・・・・
秋篠に手渡された希羅の衣装を手に、そっと部屋へ戻ると、瑠璃姫は薄い衾で体を覆って褥の上に座っていた。
そのお顔がとても寂しそうに見えて、今更ながら自分のした事を後悔した。
姫は・・・私の事をお嫌になってしまっただろうか?
こうして見ていると、姫はどう見ても女にしか見えず、己が手にしている衣が偽物のような気すらしてくる。
だが一度これを身に纏えば、驚くほど勇敢で頼りになる男に変身する。
「瑠璃姫・・・・・」
希羅と声をかけるべきだろうか?とおかしな事を悩みながら、結局は瑠璃姫・・・と愛しい人の名を呼んだ。
姫はハッとしたかのように顔を上げた。
少し泣いたのだろうか?
頬に涙の痕がある。
あられもない格好でその場にひれ伏す瑠璃姫に、パサリと希羅の衣装をかけた。
「あの・・・・主上・・・・?」
戸惑った顔をしている瑠璃姫。
「すまなかった。」
素直に謝罪の言葉を口にすると、姫は慌てたような顔をした。
「そんな、おやめください。悪いのは全て私なのでございますから。」
「すみません・・・・別に怒っていた訳ではないのです。
単なる嫉妬です。」
今私の目の前で震えているのは勇敢な部下ではなく、打ち震えているか弱き女・・・・
私が今一番守るべき存在。
そう・・・・・他の誰でもなく、姫を守るべき存在は私であって欲しい。
ただそれだけなのだ。
「嫉妬・・・・・・」
瑠璃姫が困惑したような顔をする。
ぴんとこないのだろうか?
私がこんなにも姫を想って苦しんでいるというのに。
「はぁ・・・・私は姫、あなたを目の前にすると感情が抑えきれなくなるようです。」
少し困ったような顔をしている瑠璃姫があまりにも愛しくて。
そのまま姫を抱き寄せた。
「唯恵と少し話をしました。
姫がおっしゃっていた事と相違なかった。」
「・・・・・はい。」
薄い衾越しに、姫の震えが伝わってくる。
その震えは私に対する恐れなのだろうか?
「それでも・・・・・やはりだめなのです。
嘘だとか嘘じゃないとかそういう問題ではなく・・・・・
私はただ・・・・・」
私はただ、あなたの全部でありたいのです。
――――なんて言葉、恥ずかしくて言えそうになくて、口を噤んだ。
「私の事を嫌いになりましたか?」
嫌いになったと言われても、勿論手放すことなど出来ないのだが。
「と、とんでもございません!」
「なら、どう思っていますか?」
姫が沈黙する。
どんな答えが返ってくるのかと、胸がドキドキしてくるのがわかった。
たかが女一人の答えに、こんなに一喜一憂しようとは・・・・・
「ふ、深く・・・・お慕いしております・・・・・」
お慕いしている。
それはどうとでも受け止められる言葉。
「それは権中将として?それとも瑠璃姫として?」
姫は少しだけ考えるそぶりを見せてからおっしゃった。
「権中将としましては・・・・・とても尊敬の念を抱いております・・・・
尚侍としましては・・・・・」
尚侍としましては・・・とは、即ち女としては・・・・ということ。
女としての瑠璃姫は、男としての私をどう思っているのだろうか?
当たり障りのない言葉で濁されるのだろうか?
帝である私を目の前にして、おかしな事を言えない事はわかっている。
それでも少しでも嬉しい言葉を聞きたかった。
じっと瑠璃姫を見詰めていると、少しだけ頬を赤くして。
小さな小さな声でおっしゃった。
「主上が・・・・他の女御様を召されたと聞くと・・・・胸が痛みます・・・・」
「それは・・・・・」
心臓がドクンと音を立てるのがわかった。
「触れられると、体中が熱くなります。」
「瑠璃姫・・・・」
体中が熱くなってくる。
「お怒りになられて・・・・嫌われたと思ったら・・・・・」
姫の大きな瞳から、ほろりと涙が零れ堕ちた。
「嫌われたと思ったら・・・・どうして良いのかわからなくなりました。」
「それは・・・・・」
それは私の事を好いてくれていると思っていいのですか?
そう聞きたかったのだが、まるでそれを遮るかのように、急に瑠璃姫が両腕を私の首に回してきた。
自然と密着する体。
薄い衾越しに、姫の心臓がドキドキと音を立てているのが伝わってくる。
そして――――
柔らかな姫の唇がそっと重なった。
瑠璃姫から私に口づけをしてくれたのは・・・・・多分初めての事。
「瑠璃姫・・・・・」
もう何も言わなくともお互いの気持ちがわかるような気がした。
「主上・・・・・」
瑠璃姫の甘い声が私を誘い・・・・
そのまま褥へと倒れこんだ。
「はぁ・・・・昼間からは我慢しようと思っていたのに・・・・姫、あなたのせいですからね。」
本当に、本当に我慢するつもりでいたのだ。
だがどうやらそんな我慢は必要ないようだ。
瑠璃姫の耳もとに唇を寄せて囁いた。
「瑠璃姫でいる時は・・・・・
私の事を鷹男と呼んで下さい。」
鷹男とは、私が裏で内密に動くときに使っている名で。
その名を知る者はごくわずか。
姫には私を主上・・・・ではなく、鷹男と呼んで欲しかった。
他の女御達とは違うと知って欲しかったのかもしれない。
「たか・・・・・お?」
瑠璃姫が私の特別な名を呼ぶと、なんだかお互いが特別なような気がした。
姫の弱い耳たぶを軽く噛んで、脱がせる必要もない体にそっと手を伸ばした。
「鷹男・・・・・鷹男っ・・・・鷹男っ!!!」
姫の中心は驚くほど潤っていて・・・・
いつもよりも深く、強く互いが繋がった。
初めて、身も心も一つになれたような気がした。
結局――――
その日瑠璃姫が希羅権中将に戻ることはなかった。
そろそろ――――
色々と決断しなければならない時期かもしれない。
続く
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夜御殿で瑠璃姫は、今も何一つ身に纏わずに震えているのだろうか?
そう考えると、気まずい気持ち以上に、体が高ぶるのもわかった。
所詮私もただ一人の男なのだと思い知らされる。
女一人にこれほど振り回されようとは・・・・
秋篠に手渡された希羅の衣装を手に、そっと部屋へ戻ると、瑠璃姫は薄い衾で体を覆って褥の上に座っていた。
そのお顔がとても寂しそうに見えて、今更ながら自分のした事を後悔した。
姫は・・・私の事をお嫌になってしまっただろうか?
こうして見ていると、姫はどう見ても女にしか見えず、己が手にしている衣が偽物のような気すらしてくる。
だが一度これを身に纏えば、驚くほど勇敢で頼りになる男に変身する。
「瑠璃姫・・・・・」
希羅と声をかけるべきだろうか?とおかしな事を悩みながら、結局は瑠璃姫・・・と愛しい人の名を呼んだ。
姫はハッとしたかのように顔を上げた。
少し泣いたのだろうか?
頬に涙の痕がある。
あられもない格好でその場にひれ伏す瑠璃姫に、パサリと希羅の衣装をかけた。
「あの・・・・主上・・・・?」
戸惑った顔をしている瑠璃姫。
「すまなかった。」
素直に謝罪の言葉を口にすると、姫は慌てたような顔をした。
「そんな、おやめください。悪いのは全て私なのでございますから。」
「すみません・・・・別に怒っていた訳ではないのです。
単なる嫉妬です。」
今私の目の前で震えているのは勇敢な部下ではなく、打ち震えているか弱き女・・・・
私が今一番守るべき存在。
そう・・・・・他の誰でもなく、姫を守るべき存在は私であって欲しい。
ただそれだけなのだ。
「嫉妬・・・・・・」
瑠璃姫が困惑したような顔をする。
ぴんとこないのだろうか?
私がこんなにも姫を想って苦しんでいるというのに。
「はぁ・・・・私は姫、あなたを目の前にすると感情が抑えきれなくなるようです。」
少し困ったような顔をしている瑠璃姫があまりにも愛しくて。
そのまま姫を抱き寄せた。
「唯恵と少し話をしました。
姫がおっしゃっていた事と相違なかった。」
「・・・・・はい。」
薄い衾越しに、姫の震えが伝わってくる。
その震えは私に対する恐れなのだろうか?
「それでも・・・・・やはりだめなのです。
嘘だとか嘘じゃないとかそういう問題ではなく・・・・・
私はただ・・・・・」
私はただ、あなたの全部でありたいのです。
――――なんて言葉、恥ずかしくて言えそうになくて、口を噤んだ。
「私の事を嫌いになりましたか?」
嫌いになったと言われても、勿論手放すことなど出来ないのだが。
「と、とんでもございません!」
「なら、どう思っていますか?」
姫が沈黙する。
どんな答えが返ってくるのかと、胸がドキドキしてくるのがわかった。
たかが女一人の答えに、こんなに一喜一憂しようとは・・・・・
「ふ、深く・・・・お慕いしております・・・・・」
お慕いしている。
それはどうとでも受け止められる言葉。
「それは権中将として?それとも瑠璃姫として?」
姫は少しだけ考えるそぶりを見せてからおっしゃった。
「権中将としましては・・・・・とても尊敬の念を抱いております・・・・
尚侍としましては・・・・・」
尚侍としましては・・・とは、即ち女としては・・・・ということ。
女としての瑠璃姫は、男としての私をどう思っているのだろうか?
当たり障りのない言葉で濁されるのだろうか?
帝である私を目の前にして、おかしな事を言えない事はわかっている。
それでも少しでも嬉しい言葉を聞きたかった。
じっと瑠璃姫を見詰めていると、少しだけ頬を赤くして。
小さな小さな声でおっしゃった。
「主上が・・・・他の女御様を召されたと聞くと・・・・胸が痛みます・・・・」
「それは・・・・・」
心臓がドクンと音を立てるのがわかった。
「触れられると、体中が熱くなります。」
「瑠璃姫・・・・」
体中が熱くなってくる。
「お怒りになられて・・・・嫌われたと思ったら・・・・・」
姫の大きな瞳から、ほろりと涙が零れ堕ちた。
「嫌われたと思ったら・・・・どうして良いのかわからなくなりました。」
「それは・・・・・」
それは私の事を好いてくれていると思っていいのですか?
そう聞きたかったのだが、まるでそれを遮るかのように、急に瑠璃姫が両腕を私の首に回してきた。
自然と密着する体。
薄い衾越しに、姫の心臓がドキドキと音を立てているのが伝わってくる。
そして――――
柔らかな姫の唇がそっと重なった。
瑠璃姫から私に口づけをしてくれたのは・・・・・多分初めての事。
「瑠璃姫・・・・・」
もう何も言わなくともお互いの気持ちがわかるような気がした。
「主上・・・・・」
瑠璃姫の甘い声が私を誘い・・・・
そのまま褥へと倒れこんだ。
「はぁ・・・・昼間からは我慢しようと思っていたのに・・・・姫、あなたのせいですからね。」
本当に、本当に我慢するつもりでいたのだ。
だがどうやらそんな我慢は必要ないようだ。
瑠璃姫の耳もとに唇を寄せて囁いた。
「瑠璃姫でいる時は・・・・・
私の事を鷹男と呼んで下さい。」
鷹男とは、私が裏で内密に動くときに使っている名で。
その名を知る者はごくわずか。
姫には私を主上・・・・ではなく、鷹男と呼んで欲しかった。
他の女御達とは違うと知って欲しかったのかもしれない。
「たか・・・・・お?」
瑠璃姫が私の特別な名を呼ぶと、なんだかお互いが特別なような気がした。
姫の弱い耳たぶを軽く噛んで、脱がせる必要もない体にそっと手を伸ばした。
「鷹男・・・・・鷹男っ・・・・鷹男っ!!!」
姫の中心は驚くほど潤っていて・・・・
いつもよりも深く、強く互いが繋がった。
初めて、身も心も一つになれたような気がした。
結局――――
その日瑠璃姫が希羅権中将に戻ることはなかった。
そろそろ――――
色々と決断しなければならない時期かもしれない。
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